小沢健二モノローグ「三割増し」(2017/10/5 NHK SONGS)

音楽

2017/10/5にNHK総合テレビで放送された音楽番組「SONGS」。

この日のゲストは小沢健二。

新曲名曲とりまぜて歌う以外に、この番組のために書き下ろしたモノローグ(独白)を4編ほど披露しました。

その二つ目を書き起こしましたので以下からどうぞ。
一つ目→「文化が、町をつくる」
三つ目→「英語のテスト」
四つ目→「重なり合う二つの姿」

「三割増し」

今回、
僕はSONGSの
制作チームから、
「なぜ芸能界から姿を消したのか」
など、
自分の過去を語ることを頼まれた。

ちょっと考えがあって、
以下のモノローグで、
お答えすることにした
題して
「三割増し」。

今時、
人はネットに自分の暮らしを
アップする。

ソーシャル・メディアには、
すてきな食べ物の
写真が並ぶ。

が、
もちろん、
アップした人の生活は、
本当は写真ほどすてきではない。

友人は言う。
「今は大変ですよ。
自分を三割増しに見せるために、
高校生の男子でも、
背景や小道具を選んで
自撮りしなきゃならないんですから」と。

友人は続ける。
「みんな
どこかに行ったから
写真を撮った」という
フリをしてますが、
本当はそもそも、
写真を撮るために、
そこへ行ってるんですよ。
彼女は、いたずらっぽく笑う。

人が
自分を
よく見せようと
するのは、
自然。

歴史の授業では
「日本書紀には、
当時の政府が
自分をよく見せるために作った、
神話が混じっている:
と教わる。

国も、
人も、
自分をよく見せよう
とする。

婚活サイトに並ぶ、
見栄えのいい写真や
プロフィールは、
アップした人自身が作った、
神話なのだろう。

しかし、
現実は厳しい。

婚活サイトで出会った人と
カフェで待ち合わせして、
一目見た瞬間、
お互いの神話は崩れる。

そうか!
メガネをかけて、
斜め上から撮れば、
あのプロフィール写真に
なるのか!

確かに(悔)!

と、過去の写真の仕組みが
一瞬でわかる。

現在というものには、
一瞬で
過去のすべてを
見せる力がある。

さて、
僕がSONGSで
過去を語ることを頼まれて、
「じゃあ」と
切々と過去を語ったら、

僕も
婚活サイトの写真
のように、
自分を
よく見せてしまう
かもしれない。

自分についての
神話を、
作ってしまうかもしれない。

斜め上から
写真を撮るように。

しかも、
実は、
本人が語る
本人の過去なんて、
人は内心、
話半分に聞く。

だったら、
現在の
自分の眼に
見えるものを、
報告した方がいい。

その報告が、
過去の自分を
説明する、
とも思っています。

神話は、
とてもおもしろいものだけど。

■これ以外のモノローグ書き起こしはコチラから。
一つ目→「文化が、町をつくる」
三つ目→「英語のテスト」/a>
四つ目→
「重なり合う二つの姿」/a>

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