「クリスマスの約束」山下達郎から小田和正への手紙

クリスマスの約束 音楽

クリスマスの約束

2001年から毎年クリスマスの時期にTBSで放送されている「クリスマスの約束」。

なかなかお目にかかれないコラボや選曲もさることながら、再放送や映像化がされない番組なので見逃すとなかなかショックの多い番組でもあります。

そんなクリスマスの約束も今年2016年の放送で16回目。

「クリスマスの約束 2016」セットリスト(放送分17曲)

今では委員会バンドやほぼレギュラーともいえるアーティストに加え、毎年目玉ゲストが出演する番組になっていますが、2001年の第1回はホスト役の小田和正一人だけのステージでした。

この第1回クリスマスの約束にさきがけて、実は小田和正は7組のアーティストに出演を依頼する直筆の手紙をしたためていました。

小田和正から7組のアーティストに宛てた手紙

そのアーティストたちとは、SMAP、福山雅治、桑田佳祐(サザンオールスターズ)、松任谷由実、宇多田ヒカル、桜井和寿(Mr.Children)、山下達郎の7組。

そしてその手紙はこんな内容でした。

前略

突然の勝手な手紙を出す無礼をお許しください。

TBSから、現在、ある音楽番組をやれないか、という打診がありました。そして考えました。

自分の歌を歌えばファンの人は喜んでくれるだろうけれど、それは目指すものではなさそうだ。

そして、さらに考えました。

僕等のような音楽をやって来た者にとって、今、大切な事は何だろうと思ったのです。

それは同じ時代を生きてきて、音楽を創った人達を認め、愛し、尊敬することなのではないだろうかと。

それをこの番組で表現できないかと。それなら引き受けてみようと。

これは、僕の主観でやろうとしている番組です。偏見を承知で、批難を覚悟の上で、無数にある名曲から一方的に7曲を選びました。

時代を創ってきた素敵な音楽達を。それで、あなたの曲をその一曲に選ばせてもらいました。

随分と前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

この曲を一緒に演奏してもらえないだろうか?というお願いの手紙だったのです。

これは、あいつがだめだったらこいつという企画ではないし、もし残念ながら、あなたの不参加が決まったら、自分ひとりで演奏するつもりで望んでいます。

アーティスト同士が直に触れ合うことで進んでいける場所がある。音楽としても、音楽という文化の確立としても。そう信じています。

それが見ている人に伝わるように全力で尽します。たとえ出演を断られたとしても、あなたへの尊敬の気持ちは些かも変わりません。

秋も深まるばかり。風邪などひかぬよう、充実した活動を続けてください。

2001.10.5 小田和正

結局第1回,第2回は小田一人のステージとなりましたが、第3回でMr.Childrenの桜井和寿が出演、それ以降もSMAP中居正広や宇多田ヒカルも出演を果たしています。

この7組のアーティストの中で、これまでも、これからもテレビ出演することはないだろうという人が一人。山下達郎であります。

小田和正と山下達郎。犬猿の仲とも言われますが、その山下達郎から小田和正への返信が第1回放送の中で紹介されました。

山下達郎からの返信

前略
小田和正様

ご丁寧な直筆のお手紙をいただき、ありがとうございました。

小田さんをはじめ、TBSのスタッフの皆様方の番組に対するご趣旨は十二分に理解いたしておりますが、いかんせん、私はこれまでテレビの番組というものに一度も出演したことがありません。

二十年程前にCMに一度、レコード大賞の授賞式に二度程出ましたのが、私のテレビ出演のすべてであります。

もともとはご縁がなかった上に、キャリアが加わって、今では、テレビメディアとの関係は、完全に音楽的な部分のみとなっており、こうなりましては、今さらどうにもなりません。

小田さんをはじめ、諸先輩が今なお堂々たる現役としてご活躍されているということは、私のような者にとりましては大きな励みであり、目標でもあります。

従いまして、小田さんのおっしゃる「アーティスト同士が認め合う」という発想にも十二分、共感できますし、できますなら何かお手伝いさせていただければとも思うのですが、こういうときにはいつも申し訳なく感じております。

もともとこの曲は、オフコースに触発されて作ったものです。 青山のアパートの一階がオフコース・カンパニーで、二階に私の所属事務所があった時代でした。

あの頃は私も30歳になったばかりのとんがった盛りでした。

バンドで挫折した私にとって、オフコースはとても重要なライバルで、敵(失礼!)がバンドのコーラスなら、こっちは一人でとか、そういったしようもないことを若気の至りでいろいろと考えたものでした。

長い時を経て、小田さんにこの曲を歌っていただける時代になったとは、本当に感慨無量です。

今後とも一層のご活躍を陰ながらお祈り申し上げております。 まずは取り急ぎお詫びならびにご挨拶申し上げます。

草々

2001年10月20日 山下達郎

手紙の後半でオフコース(小田和正のバンド)をライバル意識していたことも書かれていますが、そのことがこれまで彼が作った素晴らしい楽曲の数々の原動力になっていたのかもしれないと思うとなかなかアツいものがあります。

まあ、もう二人ともいい大人ですしね笑。

ちなみに、この手紙が紹介された2001年の第1回放送で小田和正が歌った山下達郎楽曲は「クリスマス・イブ」であり、番組のサブタイトルは「…きっと君は来ない」でした。

もうこのやりとりから16年経つ(2016年現在)わけですが、やっぱり君は来ないのだろうか…いつか来てほしいなあ!!

コメント

  1. 手紙の内容さえ掲載されましたか

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