[ショートショート]まだ見ぬ兄弟

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僕の名前は光。職業は…うーん、なんて言ったらいいのかな。タレントっていう人もいるし、ラジオパーソナリティって見てる人もいると思う。

まあそんな仕事をいろいろやってるのだけど、こないだ衝撃の事実を知った。

僕には兄がいる、というのだ。


兄(ということになっている人)の名前は静。彼はいわゆる物書き。

いやあびっくりした。名字が同じだからまさかとは思ってたけど…。

異父なのか異母なのかとかはわからない。でもとにかく兄弟らしい。へえ。

その兄にこないだ初めて「兄弟」として会った。

「兄弟」として初めて対面した兄は雑誌や本の近影で見るのとあまり変わらなかったが、開口一番こう言った。

「俺らにはあと二人兄弟がいる」

上の弟が動、下の弟が影。いやいやいや、兄弟で対義語にしなくてもいいだろ…。

兄も読み方は知らないらしい。最近話題のDQNなんとかじゃないのかこれは…すごい先取り感だ…。ムーブとシャドウとでもしておこうか。

さらにさらに、この二人はなんと!体は一つだと兄は言う。

はい?

もうわけがわからなくなってきた。

正確に言うと多重人格者である、と。じゃあ三人兄弟じゃん、と言いかけたけどややこしくなりそうなのでグッと言葉を飲み込んで兄の話に耳を傾けた。

もうここまでくると聞くこと聞くこと一つ一つを信じるとか信じないとか言ってられないレベルである。

たまに闇、と名乗るいう人格とかもでてくるらしいのだが一年に一回あるかないかくらいなので兄弟にはカウントしないとのこと。なんだそりゃ。

「お前にお願いがある」

兄は僕にそう言った。

「な、何?」

いつの間にか僕は兄弟らしい口をきいていた。仕事で会うと思っていた時には絶対にありえないことだ。

兄弟として初めて対面してから数十分、僕らは兄弟そのものだった。

「闇を…闇をあの身体から追い出して欲しいのだ。あれはあの身体にはいてはいけない存在なのだ。それは俺にはできない。お前しかいないのだ」

「なぜ兄貴にはできないの?」

「私も以前三度ほど試みたさ。だが三回目にして膝に矢を受けてな…」

いや、さっき普通にこの席まで歩いてきたじゃん!大丈夫じゃん!

ていうかこの人こういう事言う人だったんだへー。こういうキャラだったんだへー。近しい人にしか見せない姿…なのか…?

「お、おう」

「そうか、やってくれるか!ああ弟よ!」

なんかオーバーアクションになってきたけど大丈夫だろうか。

「追い出すためにはだな、色々と装備が必要でな…まず宍道湖の底に沈んでいると伝えられている伝説の武具をだな…」

えっ?それ取りにいかなきゃいけないの?兄貴は過去三回どうやろうとしたの?無謀なチャレンジだったの?

「それからその武具をもって広島の方へだな…」

もういいよ!と叫びそうになるところで僕は目覚めた。

ああ、夢だったか。

周りを見たが「兄貴」はいなかった。ただつけっぱなしのテレビからは「兄貴」の新作小説が深夜番組ながら30分番組の中で丸々特集されていた。テレビ暇だなおい。

今まで名字が同じ、ということでちょっとした親近感は一方的にあったつもりだったけど、今さっきの出来事でなんかより身近に思えてきた気がする。

ちょっと宍道湖行きたくなっちゃったし。

まあとは言っても名前、芸名なんだけどね。

※これはすべてフィクションです。

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